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フランスの国民的作家マルセル・パニョル × 『わんぱく戦争』のイヴ・ロベール監督
南仏プロヴァンスを舞台にした2部作『マルセルの夏』と『マルセルの城』が
 デジタルリマスター4K版で8月4日(土)からリバイバル同時公開!
いまは亡きイヴ・ロベール監督のインタビューを掲載!



『プロヴァンス物語 マルセルの夏』 © 1990 GAUMONT/TF1 FILMS PRODUCTION

■フランスの国民的作家として親しまれ、映画監督としても活躍したマルセル・パニョル(1895-1974)。南フランス・プロヴァンスを舞台にした彼の自伝的作品「少年時代」を『わんぱく戦争』のイヴ・ロベール監督(1920-2002)で映画化した2部作『プロヴァンス物語 マルセルの夏』と『プロヴァンス物語 マルセルの城』が、デジタルリマスター4K版として8月4日(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほかでリバイバル公開。 ここではロベール監督が生前残したインタビューを合せて紹介する。
学校教師ジョセフとお針子の母オーギュスティーㇴのあいだに生まれ、本好きの少年として育ったマルセルはある夏、バカンスを過ごすために伯母夫婦が借りている田舎の別荘に一家でやってくる。マルセルは緑と陽光あふれるその世界に身をゆだね、虫取りに没頭し、自然の音に耳を澄ませ、そこでできた田舎の友だちとともに小さな冒険を重ねる。


イヴ・ロベール監督インタビュー
あなたは何年もの間、『マルセルの夏』『マルセルのお城』の映画化を夢みていたのだと思いますが。
■そうです、彼の「少年時代」に熱い思いがありました。というのも、私自身パニョルのような大変幸せな子ども時代を送っているからです。この特権的な「時」を楽しむべきです。それはいつかは終わるものです。
それにパニョルの文章は美しく寛大で、少しも気取っていない。彼は“僕は特別なことはしてないよ、ただ口述筆記をしただけさ!”と冗談を言ってました。
私は、すでに知り合いだった彼に1963年に会いに行きました。「少年時代」を映画化させてほしいとお願いすると、彼は“あれは自分の最後の映画作品にするつもりだ”と言ったのです。すでに「映画版」と書かれたシナリオも何ページか読みました。彼はさらにこうも言いました。“急いでやらなくちゃ!ぐずぐずしていたら、妻のジャクリーヌが僕の母より年取ってしまうからね!” 彼はジェラルディン・チャップリンを想定していたようでした。その頃からずっと、パニョル以外に「少年時代」を映画化するのは、私しかいないと思っていました。
わたしはプロデューサーのアラン・ポワレといっしょに再度打診に行きました。このときパニョルはノンと言わなかった。「ノン」とも「ウィ」とも。彼は亡くなっていましたから。その後、未亡人のジャクリーヌと義弟のルネは何年もの間、映画化権を譲るのをためらっていたのです。

なぜためらっていたのでしょう?
■謙虚、恥じらい、かな。

ではなにがその気にさせたのでしょうか。
■パニョルの原作をクロード・ベリ監督が映画化した『愛と宿命の泉』(アラン・ポワレがプロデューサーだった)の大成功のおかげでないかと思います。1年半か2年前、ポワレがわたしに “もういちど試してみるか? 君は何か予定があるのか?” と聞いてきた。わたしは “ある” と応えました。ルイ・ギューの「黒い血」をテレビ用に撮るつもりでしたから、ベルトラン・ポワロ=デルペッシュを起用して。ほかにもボーマルシェを素材にしたテレビドラマもつくる準備をしていました。
アランが電話で “もしパニョルの作品をやるなら、全部止められるか?” と聞いてきたとき、“全部いますぐ止めるよ。午後に君のオフィスに行くよ” とわたしは返事をしました。

クロード・ベリ監督の『愛と宿命の泉』とは反対に、スター俳優はひとりも起用しませんでしたがなぜですか?
■第一に、本当のプロヴァンス訛りを話す俳優でなければだめだったからです(マルセイユ訛りではなくプロヴァンス訛り!)。それに、私は実在の登場人物、ジョゼフ(父)、オーギュスティーヌ(母)、ローズ(伯母)やジュール(伯父)らの実物写真を見て、知っている俳優はひとりも思い浮かばなかったのです。結局、有名な俳優はかえって物語のリアリティを損なうと思い使わないことにしました。観客が俳優がだれかを見て取れるようではだめなんだと。1963年の時点ではたしかに、マリー=ジョゼ・ナット(Marie-José Nat)やピエール・モンディ(Pierre Mondy)、カトリーヌ・ルーヴェル(Catherine Rouvel)といったマルセイユ出身で、いまほどよく知られてはいなかった俳優を起用しようかと思っていました。とはいえ、じつはフィリップ・コーベールを起用する前に、ジョゼフ役にダニエル・オートゥイユとも交渉していました。しかし彼はクロード・ベリの『愛と宿命の泉』でウゴラン役を演じたばかりで、パニョル作品のイメージが定着するのを恐れて断ってきた。そのあと、舞台でフィリップ・コーベールのすばらしい演技を見て、どうしても彼をと思った。しかも彼はマルセイユ出身だった。
彼には以前ある役の出演を依頼したことがあったが断られていた。だから今度は慎重に、すぐに会いには行かず脚本とともに短いメッセージを送りました。
ほかに、4〜5カ月の間をともにできる俳優を捜しました。かなり長い撮影期間だからね。わたしは芝居を劇団という概念でとらえていた。ジャン・ロシュフォールとは続けて七本の映画を撮っている。彼の素晴らしい才能に加え、大好きな俳優だったから。

あなたの俳優として経験は、役者に演技指導する助けになりました?
■演技指導なんて笑わせる言葉だよ。必要なのは俳優に演じさせるのではなく楽しませる手伝いをすること。

『マルセルの夏』と『マルセルのお城』は、実際に子どもたちが主役です。どのように子役を選んだのですか?
■子どもに対してもっとも重要なのは、その子の音感を知ること。わたしは彼らがドビュッシーの音階を歌うのを楽しみましたよ。私のあとについて半音修正できるかどうかテストしました。大事なのは模倣する能力であり、想像力です。マルセイユの学校の教師の助けを借りて、写真による第一次審査をしました。1500から2000人の応募から約250人にしぼりました。その子たちをクローズアップのビデオ撮りで面接し、80人まで絞りました。その時点でマルセイユに小劇場を借り、そこで子どもたちを10人ずつのグループに分け、マイムと即興のセッションをしました。

コクトーの言葉を借りると、子どもはすべて俳優であるそうですね。
■わたしはそうは思いません。俳優でも詩人でもありません。すべての子どもは遊び(ゲーム)のセンスを持っていますが、必ずしも芝居のセンスとはかぎりません。そこに導く道筋を見つけてあげる必要があるのです。

それは難しいことですか?
■子どもたちについてはまったく問題ありません。多くの大人はそのことについて恐れますが、わたしは気にしません。彼らといっしょだととても気が楽になります。恐らくわたしには三人の子供と七人の孫がいるためでしょう。私の体形や髭が自然な権威を感じさせるのではないでしょうか。それにわたしは必要とあらば,尻を蹴飛ばすくらい厳しくもします。

実際何度もそうしたのですか?
■安心してください。ちょっと脅す程度でしたよ。

映画人としてのパニョルをどう思いますか?
■迷うところです。脚本には魅せられます。興行に関しては必ずしも。彼の大胆さに憧れます。彼はカメラをスタジオの外に持ちだした草分けです。イタリアよりずっと前にネオリアリズムを考え出したのです。

ご自身を巨匠と思われますか?
■わたしに少しでもその居場所があるとすれば、構築された無秩序のルノワールと、可塑的なルネ・クレールとの間でしょうか。そのルネ・クレールにいつか言われました。 “君はユーモラスな映画(film d’humor)を作りたいかね? だったら決して認められることはないだろう”

使命は果たせたと思いますか?
■すべての観客にとって楽しめるものになったと思います。しかもハイレベルに。


                             プロヴァンス物語 マルセルの夏
監督:イヴ・ロベール 原作:マルセル・パニョル
出演:フィリップ・コーベール/ナタリー・ルッセル/ディディエ・パン/テレーズ・リオタール/ジュリアン・シアマカ
1990年仏国(111分) 8月4日(土)~YEBISU GARDEN CINEMAほか
配給:オンリー・ハーツ 原題:LA GLOIRE DE MON PERE
© 1990 GAUMONT/TF1 FILMS PRODUCTION
story
学校教師とお針子との間に生まれたマルセルは、幼いころから文字を読むのが大好きな少年。両親、弟、生まれたばかりの妹とともに伯母さん夫婦の田舎の別荘で夏のバカンスを過ごすことに。豊かな緑と陽光輝くそこで、マルセルは虫を取ったり、狩猟に出かけた父と伯父を追いかけたり、ふだんとは違う生活を謳歌する。


                             プロヴァンス物語 マルセルのお城
監督:イヴ・ロベール 原作:マルセル・パニョル
出演:フィリップ・コーベール/ナタリー・ルッセル/ディディエ・パン/テレーズ・リオタール/ジュリアン・シアマカ
1990年仏国(99分) 8月4日(土)~YEBISU GARDEN CINEMAほか
配給:オンリー・ハーツ 原題:LE CHATEAU DE MA MERE
© 1990 GAUMONT/TF1 FILMS PRODUCTION
story
ふたたびの夏のバカンス。友との再会に胸を躍らせるマルセルは、そこで初めての恋を経験する。やがてパニョル一家は、毎週末を別荘で過ごすことになるが、駅からの遠路を重い荷物を持って歩かねばならず、やむを得ずいくつかの大きな邸宅の庭を通り抜ける近道を選択する。ところが気難しい管理人に見つかってしまい…。






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